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第22回:アイスランド 「光の母」助産師さんの大きな存在

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世界一平和な国

レイキャビクのランドマークタワー、ハットルグリムス教会からの街並み。

ママココ読者のみなさま、北欧アイスランドからこんにちは!
アイスランド在住歴9年の大丸智子と申します。
アイスランド人の夫と4ヶ月の娘と一緒に首都レイキャビクで暮らしています。

イギリスとグリーンランドの間に位置するアイスランドは、北海道と四国を合わせたくらいの小さな国。
美しい手つかずの自然と、アンダーグラウンドなミュージックシーンや個性的なファッションなど、サブカルチャー発信の首都レイキャビクが話題となり、いま世界中からたくさんの観光客が訪れている国です(人口約33万人の国ですが、昨年は100万人近くがアイスランドを訪れました! )。

コンサートが開かれたホテルの入り口におかれたベビーカー。中では赤ちゃんが眠っています。

『世界平和度指数8年連続1位』という輝かしいタイトルを持つアイスランド。
凶悪な事件が新聞の紙面を飾ることはめずらしく、日照時間が長い夏には真夜中まで子供たちが外で遊んでいたり、ダウンタウンのカフェの外に置かれたベビーカーの中では、赤ちゃんがスヤスヤ眠っていたり(その間お母さんはつかの間のティータイム)。
日本の人にとっては少しびっくりするような光景が見られます。

今回は、妊娠から現在まで、ほやほやの体験談をお話しさせてください。

じっくり話を聞いてもらえる検診

会社のオフィスのような雰囲気のクリニック。

アイスランドでは、妊娠、出産にかかわる費用のすべてが無料。
プレパパ、プレママ用に「両親学級」や「母親学級」「父親学級」「双子学級」などがあり、助産師さんからも関連ウェブサイトのリンクなどが載った資料をいただきました。
検診は、助産師さんに心音を聞いてもらい、資料を読んだ上で疑問に思っていること、不安に思っていること、体の不調についてじっくり話を聞いてもらう場。
妊娠8週目〜12週目の間に最初の検診へ行き、初産婦の場合出産まで約10回、経産婦の場合約7回の検診に行くようスケジュールが組まれます。
30分はしっかり話を聞いてくれ、どんな小さなことでも質問できるアットホームな雰囲気。
夫も仕事を抜け出して毎回同行し、2人で助産師さんを質問攻めにしていました(笑)。喫煙、飲酒以外の禁止事項は特になく、運動なども自分の体と相談して、というのが基本。
たしかに自分の体は自分が一番知っているはずですよね。

日本と大きく違うのは、検診はクリニックで、出産は病院で、というところ。
エコーは、基本的には前期、中期の2回のみ(私の場合、ぎりぎりまで逆子だったので、後期にも1回ありました)。

いざ出産。助産師さんが3人変わった!

いよいよ出産、というとき。
ちょうど看護師さんの賃上げストライキ中で、病院内は閑散としていました。
破水してからすぐに病院に行き、それから10時間かかったお産でしたが、その間助産師さんがくるくる変わる。
ストライキのせいなのか…なんだか落ち着きませんでした。
しかも2人目の助産師さん、陣痛に耐える私と、私の手を握って懸命に励ましてくれていた夫に世間話を始める(笑)。
私たちを落ち着かせるための気遣いゆえだったのか、単に退屈していただけだったのか?
次の助産師さんが交代に現れたとき、正直ほっとしました。

すべての分娩台の脇に笑気ガスが備え付けられていて、陣痛の波がよせてくるとマスクを装着しガスを吸い込みます。
陣痛がマックスになる頃には、意識がふわふわして痛みが軽減されたかのような感覚に。
ただ、最後のほうになると強烈な痛みにまったく効果を感じませんでした(使う人によってはすごく助かった、という声もあります)。
無痛分娩を選ぶ人は決して少なくありませんが、自然分娩も意外と多いようです。
出産前に行った「両親学級」では無痛分娩について選択肢の一つとして軽く触れられた程度でした。

アイスランドの伝統料理、フィッシュボール。この日は格別においしかった!

お医者さんがきたのは、出血具合を確認するための1回きり。
あとは3番目の助産師さんが励まし続け娘を取り上げてくれました。
出産後すぐのカンガルーケアで娘を抱っこしている間、後産、へその緒の切除などを済ませ、娘の体重と頭の周囲を測定。
足にインクをつけて足型までとってくれました。
そしてこの時にはすでに娘のケンニタラ(Kennitala=国民ひとりひとりに割り当てられる番号。身分証のようなもの。)が準備できて、出産届け終了。
役所へ出向いて登録する必要もなく、助かりました。

アイスランドでは通常出産から24時間以内に退院ですが、うまく授乳できないでいたところ、もう一泊したら?と言っていただき甘えることに。
病院にいる間は、看護師さんや助産師さんが代わる代わるやってきては、授乳の様子をみてアドバイスしてくれ、思いのほか手厚いフォローでうれしかったです。
これらの入院費用もすべて無料でした。

退院。最大の助っ人あらわる!

帰ってきてからも相変わらず授乳に苦戦しましたが、日本から母が駆けつけてくれていたおかげで、家事などはお願いし、娘のことと自分の体の回復のみに集中できました。
夫も育児休暇をとり、頼もしい3人体制。
アイスランドでは育児休暇は9ヶ月とることができ、そのうち3ヶ月はお母さん、3ヶ月はお父さん、残りの3ヶ月はどちらがとっても良い、と決まっています。
授乳のため、お母さんが6ヶ月ストレートでとって、お父さんは仕事と相談しながら分けてとることが多いよう。
夫は、娘が生まれてすぐに3週間とりました。
育児休暇中は、最大でお給料の80%が支給されるため、精神的にも余裕がでてきます。

一番頼りになったのは助産師さんの存在。
退院した翌日から5日間ほぼ毎日きてくれました。
娘のウンチを見てもらったり、お風呂のいれ方を教えてもらったり、授乳の仕方を見てもらったり。
高いオムツ交換台を見て、「これはどんなに赤ちゃんが小さくても目を離しちゃだめよ!」といった、実生活に即した的確なアドバイスもたくさんいただきました。
幸いにも、娘は順調に外の世界へ順応していってくれ、家庭訪問では、娘のことよりも母親の私の精神面(ベビーブルー)が必ず話題に。
産後は赤ちゃんのことでいっぱいいっぱいになりがちなので、この心のケア、身にしみました。

綿棒を使ってくるっとへその緒をとる助産師さん。わたしのへその緒は母が大事に保管してくれていますが、こちらでは保管する習慣はなく、すぐにゴミ箱に捨てていました。

助産師さんによる5回の家庭訪問が終わると、今度は近所のクリニックの看護師さんによる家庭訪問3回。
フォローに次ぐフォローにアイスランド人の夫もびっくり。
看護師さんには、湿疹やウンチの色、授乳のあれこれを相談したり、体重の増え方をみてもらったり。
そして、ここでも、ベビーブルーは大丈夫?涙でてない?と聞かれ、ストレス度を測るため簡単な質問を受けました。

さまざまな点でアメリカナイズされているアイスランドなので、粉ミルクや液体ミルクが主流なのかと思っていましたが、助産師さんからは母乳を強く推奨されました。
最初の3ヶ月はうまく出ず粉ミルクを足していましたが、足しすぎると母乳が出なくなるよ、と言われ粉ミルクの量を減らすことに。
粉ミルクを足しすぎたらいけない、お腹を空かせているのにどうしよう、自分のせいで娘に負担をかけている、と辛く悲しくなりその頃はよく泣いていました。
その頃どうしても締め切りをのばせない仕事があり、娘と一緒に昼寝できていなかったのが原因だったのかもしれません。
昼寝できていないんです…と助産師さんに伝えるとこってり怒られました。
それから、仕事は夫が夕方帰ってきてから、に切り替えました。
粉ミルクを足したり足さなかったり、をしばらく繰り返し3ヶ月がすぎた頃、母乳の量も増え粉ミルクがいらなくなりました。
叱ってくれた助産師さんに報告した時には、手をとって一緒に喜んでくれました。

余談ですが、アイスランド語では助産師さんのことをリョースモージル(Ljósmóðir=光の母)といいます。
胎内にいる赤ちゃんを外の明るい世界へ導く、という意味合いで2013年には「最も美しいアイスランド語」に選ばれました。
妊娠中から励まし続けてくれ、時には母のように叱ってくれる助産師さん、「光の母」という名前がぴったりです。

仕事復帰へ

アイスランドの羊のウールを使ったセーター、ロパペイサを着て。

来年の1月には、6ヶ月+1ヶ月(無給)の育休を終えて仕事に復帰します。
女性も男性と同じように働く共働き社会のアイスランドでは、デイケアセンターや家族の助けが必須です。
デイケアセンターはダグマンマ(Dagmamma=日中のママ)と呼ばれ、市の認可を受けて個人の家庭で運営しており、1人のダグマンマが最大5人の子供をみています。
午前8時から午後4時まで預かってくれ、仕事を先に終えたパパかママがピックアップ。
近所で、かつ安心して預けられるところを探すのも一苦労で、人気があるところはキャンセル待ちも珍しくありません。
幼稚園や学校の費用はとっても安いアイスランドですが、なぜかこのダグマンマだけ高い!
最低でも50,000円/月はかかり、家庭によっては負担できないところもでてきます。
その時の最後の砦はおじいちゃん、おばあちゃん。
どんなに遠くても多くが車で20分、という距離に住んでいるので気軽に預けにいくことができます。
娘のダグマンマデビューを来年に迎えすでにドキドキ、少し不安な反面、他の子供達と接する良い機会でもあるので娘の反応が楽しみです。

最後に

現在4ヶ月。頭を持ち上げてきょろきょろするようになりました。

アイスランドでの妊娠〜出産後の体験談、いかがだったでしょうか?
お母さんたちには365日24時間お休みはないですが、つかの間のホッと一息のお供になれば幸いです。

大丸 智子

大丸 智子

1982年愛媛県生まれ。大阪外国語大学英語学科卒業。アイスランドとの出会いは大学生のとき。たまたま目にしたアイスランド政府奨学金募集に応募し、国立アイスランド大学で1年間アイスランド語を学ぶ。アイスランドの日本大使館で2年間広報文化を担当、現在は執筆やコーディネーター業などのかたわら、アイスランド雑貨のネットショップ「Meet Iceland!」を営んでいる。著書に『大自然とカラフルな街 アイスランドへ』(イカロス出版)。

» Meet Iceland!

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