気持ちいいお産
気持ちいいお産
皆さんは「陣痛」「出産」と聞いてどんなイメージが思い浮かびますか?
「痛い?」「怖い?」「鼻からスイカ?」
叫んだり、どこかにつかまったり、誰かを叩いたり、マイナスなイメージを持つ人も多いと思います。
赤ちゃんが誕生する感動的な場面を想像する反面、だからこそ苦しみを乗り越えなければいけないと、出産を何かの修行として受け入れている方もいるかもしれません。
しかし、本来出産は【何にも代えられない快感を得られる体験】だと聞いたことはありますか?
出産時、ある程度陣痛に慣れてくると脳内から脳内麻薬と呼ばれるβエンドルフィンが分泌されます。
これはモルヒネの数倍の「鎮痛作用」があり、さらに「幸福感」「陶酔感」を感じることができるのです。
ですが、テレビや本、親や友達から聞いた話から「痛い・怖い」を植え付けられて、まだ実際体験もしないうちからビクビクしている人も多く、ビクビクして臨んだ結果、必要以上に緊張したり身体が固まった状態になり、痛みや恐怖を本来よりも強く味わっていることもあるのです。
よって「陣痛」「出産」は痛いだけのものではなく【気持ちがいい】ものだ。と皆さんの潜在意識を書き換えていきたいと思います。
リラックスってなに?
お産の時に気持ちがいいと感じるために、一番必要なことはリラックスです。
あたりまえのことと思われると思いますが、実際のところ、普段の生活から「歯を食いしばって頑張ること」を得意とする人が多い中、自分の心のままにとろけるような、身体のどこにも力が入っていない状態がわからない。
気が付けばスマホを手にして何にもしない時間を過ごすことが出来ない人が多くなってきたなぁと感じます。
実際、予定日近くになって焦るという妊婦さんに「リラックスしてのんびり過ごしてね」とお伝えしたところ「リラックスってどうすればいいんですか?とりあえずマフィンと紅茶をテーブルに置いて、本を読んで過ごしてみました。こんな感じでいいですか?」という返事が来て驚きました。
毎日ゴロゴロ、テレビの前でスナック菓子を食べ続ける妊婦さんというのは心配ですが、仕事や家のことも頑張って、休みの日には散歩をして体力をつけて、空いた時間にはスマホ片手に目を酷使しているような、何事にも一生懸命になっている妊婦さん達には、時には、何もせずゆっくり体の力を抜いて、呼吸だけに集中して自分の身体の重さや感覚を感じる。
そのまま寝てしまってもいいし、ゆらゆら動きたくなったらその感覚のままゆらゆらして、伸びたり縮んだり…そんな状態で、浅くなった呼吸が楽になる感じを感じたり、身体の緊張が解ける感じを味わえたらいいなぁと思う。
自分のココロとカラダの心地よさを感じられますか?
リラックスの次は自分のココロとカラダの心地よさを感じること。
妊婦さんとお話ししていていると「人から聞いたのですがAとB、どちらがいいですか?」と聞かれることが多い。
それは食事のことだったり、育児についてだったり、予防接種についてだったり、夫婦生活についてだったり、休日の過ごし方だったりと、内容は多岐にわたる。
そのたびに私は「あなたはどうしたいの?ココロがざわざわするのはどっち?」と聞く。
すると「本にはAと書いてあるのですが、周りの友達や親はBの方がいいって言うのです」と言われる。
多くの人が「自分がどうしたい」が抜け落ちていて「子どものため・夫のため・みんなと同じで、世間的に正しい方で…」と頭で考え、自分のざわざわした心と葛藤して悩んでいることが多い。
どちらが良い悪いではなく、子供の時から「人の迷惑にならないように」「自分の我を通さず、周りをみて協調することが大切」と何十年も習ってきた私たち。そんな学びがしっかり身について、自分がどうしたいかを感じることができなくなってきている。
今まではそれで良かったかもしれないけれど、本能的で原始的な営みである出産を、気持ちいいものにするには、何事にも、まず頭で考えるのではなく、自分のココロとカラダの動き(心地よさ)を感じることからはじめてほしいと思います。
たとえば食事
自分のココロとカラダの動き(心地よさ)を感じるならば、私は今日何が食べたいのかなぁと感じてみる。
作るのが面倒だから簡単なものではなく、お金がないから冷蔵庫にあるもので…と考えるのではなく、考えただけでよだれが出そうというものがあれば、時間があれば作ってみる。
時間がなければ食べに行ってもいいし、誰かに作ってほしいと頼んでみるのもいい。
玄米がおいしく感じられる人も、白米が好きな人もいる。
試しに健康にいいといわれる五分搗き米や雑穀を食べたらおいしかった!となれば食べたらいいし、やっぱり白米と思えば白米にしたらいい。
玄米菜食にして、頭がさえて元気になった人もいれば、逆に活気がなくなり身体を壊す人もいる。
今流行りの低糖質の食事をして体調が良くなったと感じれば牛乳やお肉もしっかり摂って、良質のたんぱく質を補えばいいし、逆に、お肉や牛乳を食べると調子が狂う人もいればやめればいい。
ただ、塩気が多いスナック菓子や甘いチョコレートがひたすら食べたい場合、それはカラダが調子を崩しているのに気付いてない状態なのかもしれません。
例えば「塩気が欲しい」と感じた場合、スナック菓子や精製された塩化ナトリウム99%の「精製塩」ではなく、海のミネラルが豊富に含まれた「自然海塩」を摂る。
「自然海塩」で結ばれた塩むすび、「自然海塩」で漬けられた梅干し、「自然海塩」と大豆や麦を麹で丁寧に発酵させて作られた味噌を作ったお噌汁。
日々それらを少し追加していくことで、身体の塩分ミネラル分は整い、むやみにスナック菓子の塩気を欲しなくなる。
甘いものが欲しいひとも、おむすびをゆっくり噛んで食べて甘みを感じると一時的な低血糖が収まり、チョコレートが欲しいわけではなかったことに気づくかもしれない。
さらに、肉や魚を食べ・白米を食べて、頭が痛くなったり、肩や腰がこったり、浮腫んだり、すっきりしないなぁ。という人は酸性に傾きやすい血液を、自然海塩と旬の野菜をたっぷり摂って中和させていくことも大切。
直感的に「食べたい!」と思ってごきげんに毎日食べているのに身体に異変が起きている。
そもそも自分のココロとカラダがわからない。という人なら、食事に限らず、あなたのココロやカラダの専門家にサポートしてもらうのもお勧めです。
お産の時の心構え
最後に、気持ちいいお産をするために、人に遠慮はしないこと。
「助産師さんや先生の言うことを聞いて、いい産婦って思われたい」「周りの人に迷惑をかけないように大きな声を出さないようにしよう」そんなことを考えていると、赤ちゃんはお母さんをもっと自分らしく枠を外してのびのび生きていけるように魔法をかけてくれる。
そして、あなたが大声を出して暴れるように仕掛けてきたり、緊急事態で、あなたが人にもっと弱い部分をさらけ出せるように、人を頼って甘えられるように導いてくれることもある。
こんな話を書くとおとぎ話のように聞こえるかもしれないけれど、たくさんのお産を見ていて、赤ちゃんが「お母さん、もっと甘えて」「もっとパパを頼って」「自分を信じて、みんなを信じて」と言っているように感じることがある。
そして大変なお産を経験した人こそ、お産の後、赤ちゃんや家族からの大きな愛を感じたという人が多い。
それはそれは大変なお産だったし、辛い気持ちもたくさん湧いて出てきたけれど、私にとっては「最高に気持ちいいお産」だったと何年もたって気付くこともある。
気持ちいいお産は決して「分娩時間が短いこと」や「痛みがないお産」だけでなく、何より自分が自分を愛し、周りの人にゆだね、赤ちゃんや家族の愛を感じたときに湧き上がる心地よさなのだ。
その気持ちが、ちょうど赤ちゃんが産道を通る時に合わさると電気が走るような快感・オーガズムとして感じる人もいるだろうし、長い年月をかけて体感していく温かい陽だまりのような幸福感・陶酔感なのかもしれない。
どちらにせよ、これから産み育てる人たちへは陣痛・出産は恐怖でも修行でもなく、私たちが今まで感じたこともないような「幸福感・陶酔感」を体感できるかもしれないのだと楽しみにしていて待っていて欲しい。
岸本助産院 助産師 岸本玲子
自身が産前産後に体調を崩した経験から、笑顔で子育てするには、まず母親になる人の健康な身体作りだと実感【元気な身体で楽しく子育て】をモットーに、安産はもちろん、妊娠前~子育て世代の【ココロとからだの元気】をサポートしています。