カップの持ち方~ほんの少しの意識と技
いつもの動作にほんの少しの意識と技をプラスするだけで、エレガントな女性の所作に変身します。 今回は、コーヒーや紅茶を頂くときのちょっとしたポイントをお伝えしますね。
紅茶の歴史
紅茶といえば、“イギリス“が浮かんでくるのではないでしょうか?
ですがお茶がヨーロッパにもたらされたのは17世紀になってから。
海上貿易で世界に雄飛していたオランダによって中国から伝えられました。
イギリスで最初にお茶が売られた1657年当時、それはまだ「万病に効く東洋の秘薬」としてでした。
ところが、1662年にチャールズ2世に嫁いできたポルトガルの王女キャサリンが、貴重な中国のお茶と砂糖を大量に“お嫁入り道具“として持参し宮廷にお茶の習慣をもたらし、この贅沢な習慣はイギリスの貴族社会に広まりました。
日本では1887年に原産地の中国からではなくヨーロッパ文化への憧れとしてイギリスからたった100kg輸入されたのが最初です。
日本の【茶の湯】の伝統にも匹敵する舶来の文化として上流社会にもてはやされました。しかしその後は戦争で輸入が制限され一般に広まることはありませんでしたが、輸入が自由化された1971年以降(大阪万博の頃ですね)、ティーバックの導入などを契機に飛躍的に増加し、ちょっとおしゃれでヘルシーな飲み物として愛飲されています。
ティーカップの持ち方
まず、コーヒーカップやティーカップを持つ時ですが、写真のように、“ガッツリ”と指を通して持っていませんか?(笑) そして、片方の手をカップに添えたりしていませんか?
カップを持つ時のポイントは
取っ手には指を通さず、3本の揃えた指で持ち上げるとエレガントです。
そしてなぜ、空いた手をカップに添えてはダメかと言いますと
取っ手のついているカップには、熱い飲み物を入れます。
熱くて持てないので取っ手が付いている訳で、
そのカップに手を添えると“ぬるいですよ。”というメッセージです。
空いた手は、テーブルに置かれたソーサーに軽く添えておくとスマートですね。
テーブルから遠いソファでは、ソーサーを胸の位置で添えます。
なので、あなたがサービスする側でしたら、ぬるいコーヒーや紅茶は出さないで下さいね。
使ったティースプーンは、カップの向こう側に置きます。(世界共通です)
コーヒーや紅茶は香りを楽しむ飲み物でもありますので、
最初の一口目は、砂糖やミルクを入れずにストレートで頂くのがマナーです。
取っ手は右? 左?
コーヒーや紅茶をお客様にお出しする時、取っ手はどっち向き?と悩まれたことはないですか?
18世紀初頭、ヨーロッパの上流階級で使われていたカップは、中国の景徳鎮や日本の伊万里の湯飲みを輸入して使われていました。その後カップの図柄が飲む人に向くように取っ手が付けられました。
ですので、この場合は図柄のある方を正面とすればOKです。
これは、日本の茶道と同じですね。
では、図柄のない無地のカップの時はどうすれば良いでしょう?
実はこれは、右か左か、正しいということは無いようです。
出されてすぐに飲めるように取っ手を右に向けて出すのが合理性を重んじ、かつブラックでの飲用が多い「アメリカ式」で、砂糖やミルクをスプーンでかき混ぜる際、音が立たないよう取っ手をつまんでカップを安定させる為に左に向けて出すのが行儀作法を重んじる「イギリス式」と言われています。
イギリス式では右手で取っ手をつまんでソーサーの上のカップをぐるっと反転させて飲むのですが、このイギリス式を採用している日本のホテルが多いのは「紅茶が日本に入ってきた時に茶道の作法が取り入れられてこの“ぐるっと反転”が主流になった」と言われています。
ここで気付かれた方もいらっしゃると思いますが、これらは飲む人が右利きを前提としていますよね。
“マナー”とは相手を思いやる心です。
ですので、お客様が左利きだと分かっている場合は、一般の向きとは逆にしてお出しすることはアリではないでしょうか。これは、カップに限らず、お箸でもフォークでも応用できますね。
プレシャス・フィニッシングスクール マナー講師 植木 典子
もっと日本の女性は綺麗になれるはず!という思いのもとプレシャス・フィニッシングスクールをされています。これはエレガントな女性に必要な立ち振る舞い、所作そしてマナーを学ぶスクールです。