第1回:大阪 近所のおじさんに言われた一言、「大阪をよろしく!」
おしゃべりを象徴?全国でも、群を抜いて子育て支援施設が多い大阪
始めまして、今回コラムを担当することになりました岡田由佳子です。現在、1歳半の女の子のママです。
関東から結婚を機に引っ越しし現在、大阪市内に住んで3年目を迎えます。
大阪は関東と比べると別世界。あまり意識しなかったけれど、住み始めてしばらくすると、よくまあ、こんなにおしゃべり好きな人が集まったものだと驚きました。
面白いのは「しゃべる」ということに関して、自然に強くなってしまう大阪の特殊な環境。娘と一緒に出かけ、ちょっと信号待ちすれば、いろんな人たちが「かわいいなあ」、「気をつけてね」とその時々、感じたことを素直に口に出す大阪人。
私も何か話せば、その言葉を拾って返してくれる安心感に、ついつい心が開放されてしまい、いつの間にかいろいろしゃべる性格に変わっていました。
つどいの広場
そのおしゃべり好きを象徴するかのように、大阪府には、ひろば型の地域子育て支援事業の実施施設が2位の埼玉県、161ヶ所を大きく上回る209ヶ所とダントツで全国一位(参考1)という子育て環境があります。
これは、いわゆる「つどいの広場」で、子育ての負担や不安を軽減させるため、情報交換や保育士などによる育児相談など行う子育て支援施設です。
「同じくらいの子供をもつママが集まって、いろいろお話しましょう」という感じなのですが、大阪では2005年からこの事業の活動が始められ、子育てママに不可欠な場所を提供してくれています。
私自身、大阪での子育てに慣れない時期、この広場を利用し、とてもお世話になりました。
初めての育児は何かと大変で、主人がいない日中は生後3ヶ月の娘と二人きり。時間の過ごし方が分らず、変な時間に昼寝してしまったり、ずっとテレビを見ていたりして「こんなんで良いのかな」と自分の育児に不安を感じていました。
日常の子育てへの不安や夫婦関係の愚痴、とりあえず、誰かに聞いてほしいと思い自分のために向かっていたのが広場でした。
今では、広場でお友達になったママやパパと町でばったり会って立ち話をしたり、娘が退屈そうだったら広場に連れてって体力を使わせて夜しっかり寝かせるようにしたり、広場を上手に利用して、楽に子育てできるようになってきました。
大阪の底力は子育てにも活きる
大阪の子育て環境は今、橋下徹市長を中心とする大阪維新の会により、塾代補助制度「バウチャー」導入案や学校選択制導入案など、急速な変化を迎えそうな気配があります。
ただ、小さな子どもをもつママたちにとっては「つどいの広場」のような、大阪の人たちが今まで、コツコツと地道に作り上げてきたものが、ありがたいのではないかと感じるのです。
大阪人は大阪が好き!
大阪はもともと地元として住んでいる人、他県から仕事などの関係で引っ越してくる人がほどよい具合で共存している町です。 東京にいた頃は毎日、大勢の人たちに会い過ぎて、良い人間関係を築けず苦労しました。それに、若い人たちのほとんどが「いずれはこの土地を離れる」という感覚でいたので、友達になっても人間関係を大切にすることは希薄でした。
それに比べ、大阪には老若男女「この土地が好きだから一生ここ!」という気持ちで住んでいる人が多いです。 その人たちは皆、個性的で人情味があり、他人との距離感をうまく保ちながら日々の生活を楽しんでいます。
私自身、大学進学、就職と土地を点々としなければならない期間があり、住居環境の変化に対応するのが大変でした。
その大変さが身にしみているからこそ、大阪に引っ越しし、挨拶で訪れた近所のおじいさんに「大阪をよろしく!」と言われた時は、「もう一生ここに住めば良いんだ」と安心し、うれしくなったのを覚えています。
同時に、一生住み続けるからこそ、生活環境をより良くしようという意識の高さを感じました。今では、その一員としての意識を持って地域活動にも積極的に取り組んでいます。
そんなふうに、地域ぐるみで子育てしようという意識の高い大阪は、ママたちにお勧めの町です!
参考1:厚生労働省「平成23年度地域子育て支援拠点事業(ひろば型)実施状況」
岡田 由佳子(おかだ・ゆかこ)
1986年3月17日生まれ。自転車ジャーナリスト、ライター。
高校から自転車競技を始め、オリンピックを目指して競技に打ち込み、高校選抜とJOCカップの500mTTで優勝するなど自転車競技を極めた。
2008年の3月に自転車を中心とした情報媒体業務をこなすプレスポーツに入社。社長と師弟関係を結び、記者、ライターとして働くことになった。
翌2009年3月、イラストレーターである妹とともに「7月のフランス自転車とともに」を出版。その後も新聞、雑誌、インターネットサイトなど、あらゆる媒体で執筆する。
2010年に結婚を期にプレスポーツを退社して大阪に移住すると同時に独立。2011年1月出産後、2012年にジャーナリスト活動を再開し現在はターザン、アンアン、フリーペーパー「サイクル」などで執筆中。