第13回:香港 こどものアイデンディティを育てる
香港と関西は似てる!?!?
ママココ大阪をご覧のみなさま、はじめまして!
香港在住のりんみゆきです。
香港は関西人が多いんですよ。
話し方や声の大きさ、歩く速さをはじめ、ノリが似ているから住みやすいようです。
私が約20年前に香港に来た時もたいして違和感なく、スーッと香港に馴染めたのは高校と大学時代を京都で過ごして、関西慣れしていたからかもしれません。
現在は香港の離島にニュージーランド人の夫、10歳の長男、そして8歳の長女と一緒に暮らしています。
生まれは東京、幼稚園と小学校低学年は山口県で過ごしました。
その後父の転勤でニューヨークとワシントンで暮らし、高校入学の時帰国。
大学卒業後に香港の航空会社に就職し、10年勤務した後、長男の出産を機に退職しました。
その後日本語教師にもなりましたが、今は香港日本人補習校を運営しながら、フリーランスでライターや通訳をしています。
長男が出産した時に立ち上げた香港在住ママたち向けの日本語育児サイト「香港ママの便利帳」の運営も細々と続けています。
私立と公立病院の出産体験
香港での出産は私立病院と公立病院が選べるのですが、天と地の差。
それもそのはず、お値段のゼロの数が3つ違うのです!
長男を妊娠していた時はちょうどあの世界中を不安にさせたSARSの時期。
妊婦さんがSARSで亡くなったけれど胎児は取り出して無事だとか、妊婦デビューしてすぐにショッキングなニュースばかり。
ほぼ無料で、多くの患者さんが出入りする公立病院での健診や出産は心配だったので、私立病院で出産することにしました。
私立病院で出産するとなると、健診も私立のクリニック。
香港の私立出産では健診はクリニックに通い、出産するときには自分が予約している私立の産院にそのクリニックのドクターに来てもらうというシステムなのです。
私立病院はお部屋からの眺めも最高、食事もメニューから好きなものを選べ、個室だと夫も一緒にお泊り可。
長男は生まれてすぐ肺に問題があり特別治療室にいたため、一週間の入院生活は夫も休みを取ってまるでホリデー気分でした。
「赤ちゃんの面倒はみておくから、外食してきなさい」と看護婦さんにすすめられ、病院を抜け出して夜景の見えるレストランでディナーしたり。
2人目の長女の出産は公立病院にトライしました。
健診は公立のクリニック、出産も公立病院ですが、自分で選べるわけではなく住んでいる地区で決められます。
健診も出産も香港IDカードを持っていたら無料。
出産して退院するときには病院宿泊代として150香港ドルの支払いをしたのみ。
健診のクリニックでは予約ができないのでいつも数時間待ち。
産院も妊婦さんで溢れていたので、私が産前病棟で待機していたときには産後の妊婦さんも新生児つきで産前病棟にいました。
長女を出産した時期は中国大陸から香港に赤ちゃんを産みに来る妊婦さんが多いことが社会問題になっていたこともあり、産後病棟に運ばれてくる妊婦さんは警察にパスポートチェックをされていました。
自然分娩の場合2泊3日で退院なのですが、ベッドの数が足りないので3日目の朝早く病院を追い出されました。
Who am I?
アジアの金融中心地香港は国際都市なので、いろんな国の人が暮らしています。
子どもたちが通う幼稚園や小学校の選択肢としては広東語(一部英語もある)の現地校か英語(学校によってフランス語やドイツ語)のインターナショナルスクール(以下インター)。
私の子どもたちはインターに通っているのですが、3歳で入園して一番はじめに習うことは「自分について」。
香港には父の国、母の国、生まれた国が全部異なる、3つのカルチャーの中で育つ子どもたちが大勢います。
この子どもたちは自分のルーツを小さい時期からきちんと伝えないと、アイデンティティの問題に直面してしまうのです。
我が子たちも例外ではなく、母親は日本人、父親はニュージーランド人、香港生まれで両親が永住権を持っているため、生まれながらにして香港の永住権も取得。
幼稚園では幼児各自が自分のお母さんの国とお父さんの国、そして生まれた国について考えます。
クラス誰ひとりと同じ境遇のお友達はいないので、「みんな違う」「だから私は特別」ということを学ぶのです。
幼児は両親の国の旗を作ったのですが、20人のクラスで13本の旗が誇らしげに揺れていました。
インターナショナルフードフェア
香港のインターでは毎年恒例の学校イベントが11月にあります。
それは各国のお母さんたちが自分の国の料理を披露するフードフェア。
学校には43か国の児童が在籍していて(まるで国連並みですよね!?)、その半分くらいが出店します。
日本人チームも毎年早起きして、寿司60合分を巻き巻き、焼きそば80食、焼き鳥や餃子1000個を仕込み、浴衣やハッピを着て販売。
どの国の出店もお母さんの愛情がたっぷりつまった本場の味なので、本当においしいのです。
売上は全て学校や香港のチャリティ団体に寄付。
土曜日は日本語の日
我が家の子どもたちの母語は今後のことも考えて英語なのですが、やはり母として日本語も少しは勉強してほしいもの。
長男が小学一年生になったとき、さて通わせようと思っていた補習校が香港にはないと知り、唖然としました。
補習校とは平日インターや現地校に通う日本国籍を持つ児童が、土曜日の午前中、日本語で国語や社会などを学ぶところ。
世界中には250校以上の補習校がありますが、調べてみると、保護者が設立してその後政府に援助を申請できるとのこと。
さっそくママたち数人で立ち上げることにしました!
いろいろな壁はありましたが、一年後の2011年4月に開校。
長男は二年生から通うことができるようになりました。
補習校に通う児童の多くはお父さんとお母さんかどちらかの国籍が日本、もしくは両親とも日本人だけど香港(または海外)永住組。日本の言葉と文化を継承させたいという保護者の思いが強いのです。
自分のルーツを知らないと、子どもたちはアイデンティティを確立させて、国際人になることはできませんから。
ラガーボーイの息子は今小学校四年生なのですが、ラグビー王国ニュージーランドの中学校に進学して寮生活を送りたいそう。
あと数年で家を出ていってしまう息子と過ごせる「今」を大事にして、愛情をたっぷりと注いで、彼が自分で決めた人生の旅立ちを応援できるよう心の準備をしています。
妊娠中にある友人から言われた言葉、毎日その通りだと実感しています。
「子どもがいるとね、いない時の10倍笑顔が増えるのよ。」って。
おかげさまでこの10年間で笑い皺がずいぶんとできましたが、それは母の勲章ですよね!
りんみゆき
オールアバウトの香港ガイドやエイビーロードの家族旅行ガイドをはじめ、日本の雑誌に寄稿。趣味は走ることと踊ること。フラ、ベリーと踊っていましたが海外生活約30年、最近日本舞踊を始めました。