第18回:スペイン 家族と仲良し!のんびり子育て
スペインでは暮らしやすいのか?
ママココをご覧のみなさま、こんにちは。
スペインに住んで13年。フリーライター兼バルセロナの日系企業でOLをしています林有紀です。
なぜか地元名古屋の大学でスペイン語を専攻し、大学時代にスペインに留学をしたときに「ここしかない!」と決心。
大学を卒業し、就職して2年働いた後、スペインに舞い戻ってきました。
現在スペイン人の夫と、8歳の息子と5歳の娘と4人で、バルセロナ市内まで電車で40分の郊外のサバデル市という人口20万人の街に住んでいます。
簡単に「スペイン」と言っても、ひとことでまとめることはできません。
というのも、北と南、都市部と田舎で気候も異なれば、習慣さらには言語まで異なってしまうのです。
わたしの住むカタルーニャ州では、スペイン語でカタルーニャ語のふたつが公用語として認められています。
カタルーニャ語は、スペイン語とフランス語を足して2で割ったような言語。
みなさん「方言でしょ?」と言う方も多いのですが、ちゃんとした公用語で、文法も発音も異なります。
我が家の子どもたちは、半公立(国から助成金が出ている私立校)の学校に通っているのですが、学校はすべてカタルーニャ語。
学校から来る連絡のプリント等も、すべてカタルーニャ語です。
2歳で中学まで決める!
スペインは現在失業率が25%の大不況の真っ只中です。
その不況が始まる前の2005年あたりまでは、夫婦共稼ぎが当たり前でした。
産休はお母さんは、産後4ヶ月、お父さんは2週間です。
産後4ヶ月で保育園や実家の祖父母に子どもを預けて働くお母さんの姿を見ると、ただ尊敬の念と「一番かわいい時期なのに…」と正直思ったりします。
実際わたしは娘が3歳になるまでは午前中だけ子どもを保育園に預けて、在宅ワークの仕事をしていました。
義務教育は小学校1年生から中学4年までなのですが、みなP3という幼稚部の3歳クラス(年少さん)から預けるのが一般的になっています。
この3歳クラスに入れるためには、なんと2歳の頃からどの学校がいいかリサーチをして、抽選の結果を待つことになります。
日本のようにきちんと学区で分けるという制度がないため、同じ学区内に公立、半公立、私立、といくつもの学校がひしめきあい、みなそれぞれの校風や学校の教育システム、授業料などを加味して、志望校を考えます。
わが町では、主に公立はP3から小6までで、中学は別の公立の中学に行くことになります。
それと別に、半公立と私立は、P3(P0の赤ちゃんクラスからあるところも)から小学校6年、中学4年、高校2年、一貫教育のところもあります。
わたしの子どもたちは、幼稚部3歳クラス(P3)から中学4年まである学校で、1学年27人1クラスだけ。校長先生に「ずっと同じメンバーでつまらなくないか?」と聞いたところ「そんなこと考えたこともなかった!」という回答でした。
親戚のように仲良く過ごすようです。
高校は別のところを受けることになりますが、日本のように厳しいお受験はありません。
学校にもよりますが、自分の中学の成績証明書を持っていって、面接と学力テストで入学できるかどうかが、決まります。
2歳の時点で、高校までの学校を決めるというのは、親として本当にプレッシャーです。
実際途中で学校が合わないといって、転校していったり転入してくる子も少なくないです。
スペインの保育園や小学校に通わせて思ったことは、やはり「話す、表現する」ところを伸ばすことに重点をおいているところ。
娘の保育園では2歳ですでにクラスのみんなの前で発表という時間があります。
毎週末誰かがヌイグルミの「トニー」を家に連れて帰って、週末その子とどのように過ごしたのか、というプレゼンテーションを月曜日にします。
土日で写真を撮って、それをプリントアウトして、大きな画用紙に貼って、と親は大変ですが、目立つ、そして話すのが大好きなスペイン人は嬉々としてやっています。
そりゃ2歳からあんな風に鍛えれば、おしゃべりになるよなー、話上手になるよなー、と、思わず、納得。
さらなる日本人母としてのプレッシャー
それは、日本語。
まず、カタルーニャ語を勉強し、次に学ぶのが、英語、そしてそのあとにスペイン語、という順番になります。
なぜスペイン語よりも英語を先に学ぶのか。
それは、スペイン語がカタルーニャ語と似てるため、まずはカタルーニャ語をしっかり学んで土台ができてから、スペイン語をあとから学ぶのだ、と子どもたちの学校の校長先生に聞きました。
我が家では、わたしと子どもたちの間では、日本語(名古屋弁)、子どもたちとスペイン人のお父さんの間では、スペイン語、学校の先生や友達とはカタルーニャ語です。
見事に使い分けているから、驚きです。
日本語は、週1回の補習校で学んでいます。
バルセロナ補習校は、バルセロナ日本人学校の校舎をお借りして、土曜日の午前中に3時間授業をしています。
子どもたちが授業の間は、親は図書室や廊下で立ち話。
前から気になっているのが、バルセロナ補習校の先生は関西出身の方が多く(おそらくスペイン人と関西人の気質が似ているため!?)子どもたちに関西弁のアクセントで日本語を教えています。
なんとも不思議ですが、バルセロナで学ぶ関西弁は格別!?
子どもたちが補習校で学ぶ間、保護者はというと、「日本語サロン」という感じの雰囲気で毎週おしゃべりに花が咲きます。
同じ街に他に日本人がいなくてこの土曜日だけ日本語を話す、という人も少なくありません。
海外在住者が持つ悩みをいろいろな人と共有し、解決に導くアイデアを得る素敵な場所になっているとわたしは思います。
勉強だけでなく、バザー、運動会、餅つきなどのイベントを通して、日本の文化や伝統を日本人の親御さんたちスペイン人の親御さんたちと学んでいます。
子どもたちが喜ぶイベント!
まず楽しみにしているのが、やはりクリスマス。
スペインではクリスマスイブは、家族で過ごす1年で一番大切な夜。
スペインのクリスマスはクリスマスイブの12月24日から東方の3賢人の日1月6日までの2週間をすべてまとめて「クリスマス」と呼びます。年末年始もすべて、クリスマスに含まれるのです。
なのでクリスマスツリーなどの飾りが、年末に飾ってあっても誰もそれを指摘したりしません。
また、たとえ1月15日ごろになってもまだクリスマスツリーが飾ってあっても誰も文句は言いません。
スペイン人はおおらかなのです。細かいことは気にしてません。
他の国の影響でサンタクロースからプレゼントをもらう子もいますが、元来は、1月5日の夜に東方の三賢人がらくだに乗ってプレゼントをもってくるのが伝統です。
1年間いい子にしていた子にはプレゼント。
そして、悪い子だった子には、黒い炭のお菓子を持ってきます。
ただの砂糖のかたまりなのですが、これはこれで、おいしい。
クリスマスの次に楽しみにしているもの、それがカーニバル。
スペイン人は基本的に仮装が大好き。
2月のカーニバルのときには、みな好きな衣装をまとい、街を練り歩きます。
学校でも、クラスでみな同じ格好をしたりします。
家族大好き
スペイン人の子どもが幸せなのは、やはり大半が祖父母やいとこなど、親戚と近所に住んでいて、ことがあることにみなで集まって誕生日を祝ったり、季節の行事を祝ったりサッカーの試合をみなでテレビ観戦して盛り上がったり。
そんな家族大集合の機会が多いのも理由のひとつにあげられるかと思います。
また転勤などもないので、近所の幼馴染と30代になっても40代になってもずっと親戚づきあいのように仲良しという人も多くうらやましい限り。
ちなみに祖父母とは毎週土曜日ランチに呼ばれ、みなで14時から18時ごろまでおしゃべりを続けます。これが毎週なんです。
学校は、お昼ご飯の休みが2時間から3時間あるのが普通で、13時になると、わざわざお母さんや祖父母が学校に子どもたちを迎えに行って、家で食べさせて、また15時になると学校へ連れていきます。
治安が悪いので、小学6年生までは学校の登下校に保護者が付き添うのが普通。
お父さんも会社が家から近い人は一旦家に戻ってお昼ご飯を食べてから、また会社に戻っていきます。
専業主婦のお母さんは、1日の間に学校と家を合計4往復。
とても効率が悪いように見えるけどもスペイン人はのんびり、気にしません。
スペインでの家族の絆はこんな日常の積み重ねで少しずつ深まっていくのかもしれません。
周りは周り、自分は自分。
のんびり自分のペースで自分のやり方で、子どもをしっかりよく見つめて、子育てをがんばりたいなと思います。
林 有紀
スペイン・バルセロナ在住のフリーライター兼OL。スペイン語・カタルーニャ語の翻訳、通訳にも携わる。大学でスペイン語とスペイン現代史を専攻。日本で就職するものの、留学していたスペインに舞い戻り、転職。スペイン人の夫と結婚、出産。スペイン文化、歴史、生活について「クーヨン」(クレヨンハウス)「マガジンアルク」(アルク)などの雑誌に寄稿。