第2回:アメリカ・シアトル 「へー」「ほー」「えーっ!?」連発の出産&子育て
出産翌日にはさっさと退院
ママココ大阪をご覧のみなさん、こんにちは! アメリカ在住のライター兼二児の母のスズキマサミです。
緑溢れる街並みや美しい湖に囲まれ、エメラルドシティとも呼ばれているシアトルに留学生としてやってきたのが11年前。文化や習慣の違いにこれまでも「へー」「ほー」を連発してきましたが、出産や子育ての面では独身時代には知り得なかった新たな「ダイナミックなアメリカ」を体験し、今度は「えーっ!?」を連発しています。
大きくなっていくお腹と胸を思いっきり強調するマタニティー・ファッション。「避けられる痛みをなぜわざわざ味わう?」とばかり、みんなこぞって無痛分娩。しかし、私が一番驚いたのは、やはり出産した翌日にさっさと退院してしまうということでした。
もちろん翌日の退院は母子共に健康なのが条件ですが、たとえ帝王切開出産でも入院期間は1週間。これにはアメリカの高額な医療費や医療保険が関係するのですが、ともかく出産した翌日には生後1日の赤ちゃんを抱いて帰宅。アメリカ人の女性ってどんだけタフなの~? とのけぞりました。
そんな病院事情(保険事情?)もあってアメリカでは、ママが出産となるとパートナー(ご主人、婚約者、ボーイフレンド、はたまたガールフレンド)が育児休暇を取ってがっちりサポートするのが一般的です。
かくいう私も長男の出産時、オットに「2週間育児休暇を取るから」と言われてビックリ! 2日間と聞き間違えたかと思ったのですが、いわく
「奥さんが出産するというのに1、2日休んだだけで職場復帰したら、なんてヤツなんだとみんなに白い眼でみられちゃうよ」
日本でも育児休暇をとるご主人が増えているようですが、“2週間とらないと白い眼”はさすがに珍しいのではないでしょうか。
ママも赤ちゃんもタフなアメリカ
さて、病院での貴重な1泊ですが、アメリカでは出産すると家族や友人がお花や風船を持ってワイワイガヤガヤお祝いに駆けつけるので、ママはおちおち寝てなんていられません。赤ちゃんも赤ちゃんで、次々に押しかける訪問客に抱っこされまくり、タライ回し状態(笑)。
でもってそんな状態で翌日退院するわけですが、家でも寝たきりではなく、生後○日検診といっては赤ちゃん共々病院へ。さらに1週間もすれば赤ちゃんをお披露目がてらパーティーやら何やらとお出かけしてしまうのがアメリカのママ。というわけでアメリカではあちこちで、日本では病院でしか見られないであろう新生児を抱いたママやパパをよく見かけます。
まだイチローが活躍していたシアトル・マリナーズの試合を観に行った時のこと。「今日は○○選手の奥さんと生後10日の赤ちゃんが観戦に来ています~!」という場内アナウンスがあり、生後10日の赤ちゃんをこんな人ごみに連れて来ちゃっていいワケ!? と驚いた私。しかし慣れとは恐ろしいもの。次男の出産時は私もわずか出産1週間後に、次男共々友達のウエディングパーティーに出席していたのでした。
街では新生児+3歳くらいの子供をジョギング用ストローラーに乗せ、さらにそれに愛犬のリードをつないでジョギングする人も見かけます。
アメリカのママの特徴をひと言で表わすとしたら「タフ」ですが、さらには「子供はもちろん大切だけど、自分のライフスタイルも大事」というスピリッツが表れているような気がします。
びっくり仰天アメリカの小学校
日米の文化や習慣の違いに度肝を抜かれつつ子育てをしていたら、あっという間に長男は小学生、次男は年中さん(ちょっと寂しい母)。ここまで来たらそれほど大きな衝撃はないだろうと思っていたら大間違い。アメリカのスクールライフがこれまたカルチャーショックの嵐なのでした。
週に1度必ずピザが登場するまったくもってヘルシーではない給食メニュー(しかも、メニューに「ピザハットのピザ」なんて書いてあるし)、しかもランチタイムはたったの20分(どう考えたって短か過ぎー!!)。
ランチは持参も可能なのですが(我が家はもちろんコチラ)、みんなの持参ランチがこれまたスゴイ。定番メニューはPB&J(ピーナッツバター&ジャム)のサンドイッチなのですが、この甘々サンドイッチにリンゴでも付いていたら優秀なほう。ミニサイズのポテトチップスが付いていたり(それスナックじゃ?)、サンドイッチではなくクラッカー数枚+スライスチーズ+ハムという「ビールのつまみ系」、さらには親があとから届けたのかマクドナルドのハッピーミールを食べている子もいて、思わず私はのけぞってしまいました。
遊び心とパワーは大人にも健在
そんな無謀ともいえる食シーンが展開されている一方、アメリカの学校では通うのが楽しくなるようなイベントがたくさんあります。
クリスマスパーティーやハロウィーンパーティーなどの国民的行事はもちろん、パジャマ姿のままで登校する「パジャマ・デイ」。左右違う靴下や靴を履いたり、ストライプと水玉を合わせたり、とにかくミスマッチなファッションをしていく「ミスマッチデイ」。はたまた、奇抜な髪型をしていく「クレイジーヘア・デイ」などがあって、親の私まで学校へついていきたくなるほど。
そして、このクレイジーヘア・デイでは、ランチにこそ手をかけないお母さん&お父さんたちが、それはまあ手間ひまかけて子供たちの髪をいじくっているのですねぇ。
ヘアスプレーを使ってモヒカンなんてもはやフツー。カラースプレーで七色レインボーカラーとか、髪の毛に毛糸やおもちゃを編み込んだ不思議アフロなど、いろいろ。平日の忙しい朝にそこまでしてしまう遊び心とパワーにはあっぱれですが、よくよく考えると子供と一緒に親もこういう機会を楽しんでいるのですね。
シアトルは、大都会ニューヨークやロサンゼルスに比べると、人々のライフスタイルも子育てもゆったりのんびりしています。自分にあまり厳しくない代わりに(いや、厳しい人もいますが)人にも厳しくなく、良くも悪くもユルユル。さらに、アメリカ人はいくつになっても遊び心を失わず、人生を楽しもうという心意気があるところも気に入っています。
考えてみると、子育て中ということは、子供時代を再び体験しているようなもの。だから親も楽しまないと損ですよね。大変だと思うこともできるだけ楽しみに代えたり、でなければ思い切って手を抜いちゃう! アメリカでの子育てでそんな手抜き法を学んだような気がします。
スズキマサミ
フリーランスライター/コーディネーター。
東京でのライター生活を中断し、「人生のブレイク」と称して2年間の予定でアメリカ留学へ旅立つも、そこで予定外の就職、想定外の恋愛&結婚。気がついたら二児の母になっていた(という感じ)。
バイリンガルな男の子二人(4歳と6歳)と、そんな息子に負けてはいられん! と日本語を勉強し始めたアメリカ人の夫が生み出す日米ちゃんぽん語に吹き出しつつ毎日を送っている。
著書に『アメリカでママになっちゃった! (TOKIMEKI出版社)』『極楽西海岸の暮らし方(共著/山と渓谷社)』、『派遣の花道(WAVE出版)』などがある。
東日本大震災によって親を失ってしまった子供たちを支援すべく、Tシャツとリストバンドを制作・販売するYou can do it, Japan! (がんばれ日本!)プロジェクトを立ち上げ、チャリティー活動にも翻弄中。