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第6回:ネパール 貧しくとも心豊かに生きていく

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病院事情&スピード退院の訳

うえの ともこ

ナマステ!カトマンズ在住のうえのともこです。

ネパール、南アジアの内陸にある小さな国ですが、そこには世界最高峰のエベレストを有するヒマラヤ山脈、南には亜熱帯のジャングルに野生動物が生息する豊かな自然があり、たくさんのの民族が共存しています。
カトマンズは近年都市化が進み、以前よりは便利な暮らしができるようになりましたが、インフラ設備、衛生、医療、教育事情はやはりまだ遅れがあります。
そんな中でも子どもは生まれ、すくすく元気に育っていますよ。

秋に行われる光の祭り「ティハール」では、従姉に祝福の花輪をかけてもらいます。親戚との密なお付合いは欠かせません。

今年5年生に進級する長男は日本生まれ、4歳の次男はネパール生まれです。
次男のときは、経産婦でしたし、8月の日本の猛暑と産後赤ちゃんと飛行機で移動することを考えると里帰り出産という選択肢は最初からありませんでした。
出来るだけ自然なお産をしたいと希望し、いくつか産科を見学しましたが、こちらの希望を受け入れる姿勢は見られず、医師と病院主体の出産のみを行うという印象でした。

ネパールの病院には、保険の制度がなく全額自己負担、しかもすべて前払いです。支払いを行えない場合は診療、治療をしてもらえません。
患者や妊産婦には必ず付き添いが居て、各診療や検査の予約と支払い、必要な薬品や医療器具(注射器や点滴など)を薬局で購入して、医療者に渡します。薬局には「出産キット」という薬品類と産着などがセットになっているものが置かれていたので指示通り買いましたが、使わないものは無駄になりました。

さらに病院で食事は用意されませんので、家族が持ち込むか、食堂から出前をとることになります。
産後体力を回復し、授乳することを考えると、スパイシーなネパール料理はご遠慮したい。あっさりと食べ慣れた和食を求め、真夜中の出産でしたが、翌夕方には帰宅しました。
これは正常分娩ならごく一般的なことです。入院費も高額になるので無駄な長居はできません。

健康を祈る子どもの通過儀礼

次男のお食い初め。風邪気味でしたが、暦の吉日に強行しました。占いや暦を重要視しますね。

新生児に産湯を使わせる習慣はありませんが、毎日数回日光の下、全身オイルマッサージを施し、免疫力を高め、皮膚を丈夫にします。
だから赤ちゃんはいつも全身テカテカ、ぬるぬる。
そして魔よけと目をきれいにするという理由で、極太アイライナーをぐるりと入れています。(これはウチではしませんでした)

生後9日目、ヒンドゥー教徒は「ナラヤン」という儀式を行います。
義理の妹がベビー服のプレゼントを持ってきて、赤ちゃんと私の手足首に聖紐を巻きつけてくれました。その後6ヶ月頃には、お食い初めも行いました。

日本とよく似た風習ですね。
こういった通過儀礼や暦上の祭りには、司祭を招いたり、必ず親戚一同が集い、お祝いします。
年長者が、年少者の額に「ティカ」というお米とヨーグルト、紅粉を混ぜた祝福の印を授け、健康と幸福を祈るのです。

祈りは毎日の生活に浸透し、習慣となっています。毎朝「ティカ」を付け、頭に花びらを振りかけてもらって出かける子どもも見かけます。祠の神様にお参りし、鐘を鳴らして登校していきます。

折々に家族が集い、祝福を授けあうことによって、愛されている実感が得られ、お互いの絆がより深まっていくような気がしています。

農村生活ならではの学びと体験

雨季が始まる頃には田植え。どろんこで駆け回ります。

カトマンズには、安心して遊べる公園や児童施設はほとんどありません。
物騒な事件や事故を恐れて、親は子どもの送り迎えをします。
子どもたちは帰宅後のほとんどを家の中で過ごし、運動不足でフラストレーションが溜まり気味…。

夫の実家はカトマンズから車で3時間の農村にあり、長期のお休みには義両親や親戚が預かってくれます。
川遊び、水汲み、薪をくべたかまどでの煮炊きのお手伝いも喜んでやります。
バナナやマンゴーは木から採ってきますし、蜂の巣から蜂蜜を採取したら、蜂の子をマサラ(香辛料)で味付けしてスナックに。朝は絞りたての水牛の乳を分けてもらいに器をもって出かけ、鶏やヤギは義父が屠ってカレーにして食べさせてくれます。
大人数で寝床が足りないとなれば、干した稲わらにシーツをかけてベッドを作り、とまさに原始的?な生活。
さぞ不便で親を恋しがっているかと思いきや「カトマンズに帰りたくないよー」と言うのですから、逞しさに感心します。

農村には生命の営み、循環を目で見て、肌で感じられる暮らしがあります。それは楽しくも厳しく、時に過酷でもあります。

森羅万象に感謝が湧き上がる

春は畑を耕します。2頭だて耕運機?

秋から春までの乾季。1日の半分以上が計画停電となり、暗く寒い冬を過ごします。
首都ですら水道設備が不十分で、年がら年中水問題も抱えています。燃料危機も 度々起こります。
一滴の水がどれだけ貴重であるかということ、太陽や焚き火の炎、ろうそくの明かりや水、燃料がどれだけありがたいものか骨身にしみます。

幸いカトマンズは気候が穏やかで、最低限の暖房設備で短い冬を越すことが出来ます。
四季の花が咲き、空には満点の星、満月の夜は月光が窓から差し込み、朝日が昇る頃に聞こえる小鳥のさえずりで目覚めます。
雨が降ると同時に喜び勇んで雨水を蓄えます。
夏はエアコン不要の涼しい高原気候で快適ですよ。

こういったことを子どもたちも理解し、資源を無駄にしない、自然に対し謙虚に生きるということを学んでいると思います。
暗くて絵本が読めないときには、素語りを聞かせながら床に就きますが、即興なので話の筋がぶれていくこともしょっちゅうですが、ヒマラヤに棲む雪男「イエティ」のファンタジー(半分ホラー仕立てで怖がらせ)は好評です。いつか絵本にできるかしら?

マルチリンガルで母語が曖昧に

民族学習でプジャ(祈祷)の行事を行います。父親に祝福を授ける長男。

さて、子どもの学習環境についてですが、実はネパールには義務教育の制度がありません。
五年生までは授業料、教科書は無償ですが、その後は自費で賄います。
公立の場合、教授言語はネパール語、一方、ほとんどの私立校は国語であるネパール語以外は、教科書も英語、授業も英語で行われます。
校内ではネパール語禁止!という厳しいところも。
しかし英語至上主義になりすぎ、子どもたちにネパール語離れの現象が見られることはとても残念ですね。

学校生活に加え、それぞれの家庭でその民族の言語で会話していることもあり、必然的に多言語環境に身をおくことになります。
我が家の子どもたちも、主に家では日本語、学校では英語、社会生活全般ではネパール語を使っていますが、全てが完璧ではありません。
母語が曖昧になっている点を憂慮しているところです。

このような発展途上国での暮らしですが、貧しい、質素であるということは決して不幸であるということではありません。
村の女の子が私に言いました。
「ねぇ、ずっとここで暮らしたら?だってここはとても楽しいんだから!」
当に足る事を知っておられる!この超ポジティブ精神にならって、どこに居ようと何があろうと心豊かに生きてきたいと思わされました。

都会での育児は忙しく、時に息が詰まりそうになることもあるでしょう。
そんなときは思い切って自然を感じられるところへ行ってみてください。
きっと気持ちがすぅっと楽になりますから!

うえの ともこ

うえの ともこ

岡山県倉敷市出身。旅行会社にて企画、リサーチ&コーディネート、雑誌やWEBを中心に執筆も行う。旅行→留学→結婚のステップを踏んで現在に至る。未整備のインフラのおかげで?自然に即した暮らしを楽しみながら、ネパールを主婦的目線で見つめたコラムやエッセイを綴る。母親としての立場を生かし、子育てや教育関係、環境に関する執筆も多数。

» 十勝毎日新聞社メディア局 世界の生活情報サイト「ima」にて連載中

» ネパール子ちゃんのナマステ旅案内♪ 旅や街ネタ、グルメ情報を発信するブログ

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